日本の大学 研究力の凋落止められるか?

文部科学省「科学技術指標2023」によれば、1999年~2001年の日本の研究力は世界4位であったが2019年~2021年では13位に転落した。

 「トップ10%論文が少ない日本はイノベーションの種が枯渇しており、経済にも影響する」。今年3月11日、東京大学の後藤由季子教授は、科学技術振興機構(JST)が都内で開いた緊急シンポジウムで訴えたという。

 国は国立大学を文部科学省から「独立」させ、産学連携や研究の発展を促した。一方で、大学に配る運営費交付金を1割強減らした。この結果、地方大学では研究環境が悪化して研究を進めにくくなったとみる向きがある。

  予算が削られた結果、必要な研究予算が十分に確保できないという予算面でのダメージと、教授の雑務負担が非常に重くなり、研究に割くことができる時間を十分に取れなくなるという時間面でのダメージが広がったと考えられる。しかし、日本は言うまでもなく科学技術で国の繁栄を築かねくてはならず、大学の研究力とそれに基づく知的財産の蓄積は日本の盛衰をかけて取り組まなければならないものである。

 今回はこのような環境下、東北大学、東京大学、京都大学、大阪大学の研究の結果生み出された知的財産に基づく技術競争力の直近13年間の推移を見てみる。

  四大学の中では東京大学が2015年に非連続的に技術競争力を伸長し、それを京都大学が追う形となっている。両校は直近でも比較的に技術競争力指標(YK値)は上昇基調であるが、東北大学、大阪大学は直近では伸びがあまり見られない。

 東京大学の直近のYK値は約760ポイントであるが、産業界と比較すると総合重機主要6社の一角を占める日立造船(7004)と同程度の値である(日立造船は757ポイント)。ちなみに2024年4月3日現在の日立造船の時価総額は約2200億円、PBRは1.50である。